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2015年10月 7日

9月のブログー増加する難民問題について

      9月のブログー増加する難民問題について

 

今月も増大する難民問題を取り上げ、問題の根本にある条約等にも言及します。

8月2日に2歳の幼児の死体が海岸に打ち上げられたことで、ヨーロッパ各国の難民への対応がガラリと変わり、前向きの取り組みが進展し、それは歓迎すべきことですが事態は依然深刻です。

先ず、このような事態を招いた根本原因、諸悪の根源と言えるのは当時の三大強国英、仏、露が恣意的に国境の線引きを図ったことにあります。それは、サイクス・ピコ協定で、この協定は、1916年5月にイギリス、フランス、ロシアの3カ国が締結した秘密協定で、当時オスマン帝国が領有していた東アラブ地域におけるイギリスとフランスの勢力圏を定めたものです。協定では、フランスが現在のレバノン、シリア、イギリスがパレスチナ南部とヨルダン支配地・勢力圏とし、エルサレムを含むパレスチナ中部を3カ国による国際共同管理と定めました。現在、シリア、イラクを含む東アラブ地域の諸国家は、おおむねこの協定に基づいて設定された境界線を国境として独立しています。この住民を無視した、恣意的国境設定は、民族・国境紛争を引き起こし、現在の難民問題につながっていることの理解が必要です。つまり、問題を作り出したのは現在のEUにあります。

9月までに、難民の死者は2600人、EU、特にドイツや北欧に移動した密航者は35万人に達しています。彼らは、ヨーロッパ各国の無力な対応の犠牲者と言えます。9月末に開催されたEUサミットでも首脳たちの足並みの乱れを示すと共に彼らの及び腰の姿勢は、世界の各国に無為無策の姿勢をとる口実を与えています。難民希望者が最初に入国した国で認定手続きを受けるよう定めたダブリン条約が責任逃れになっています。

難民の最終目的地は、地理的理由から地中海沿岸諸国やバルカン半島を経由してヨーロッパを目指し、ドイツやイギリスになっています。EU加盟国の多くは、国境検査なしに域内を自由に行き来できるシェンゲン協定を批准していますが、今回のEUの亀裂は、この協定を脅かし兼ねません。現に経由地であるハンガリーでは、国境管理を強化して、国境付近では警察官が催涙ガスや放水銃で難民の流入を力ずくで阻止しようとしています。クロアチアはこれ以上の難民は受け入れられないと声明を出しています。さらに、ギリシャ、イタリーは、同協定批准国以外の国境管理で悲鳴をあげていて、他の国でも移民への恐怖を煽るポピュリスト達の躍進を許しています。欧州各国では、近年、失業増加や、格差拡大への不満が高まり、反移民や反EUを掲げる反体制派政党が存在感を増して国内対立が増加しています。

現在、レバノン、ヨルダン、イラク、トルコ、イラクに滞在しているシリア人は、国内避難民と合わせて1100万以上に達していますが、戦争の終わる見通しはたっていません。難民危機は、更に深刻化することが予想されます。今後もEUへの移民の大量移入が続けば、EUの根幹が崩れる自体に発展しかねません。そのためにも、当面の対策以外に根本的な対策が必要です。シリアの難民を止めるには、悪の根源であるアサド政権とイスラム国の始末をつけなければ、自体は悪化こそすれ解決しません。責任ある大国は、シリア、イスラム国を悪ではあるが、これを倒せばより大きな問題が発生することを恐れ、必要悪として現状維持を望んでいるのではないかと懸念されます。

現時点における、次善の策はヨルダン、レバノン、トルコといったシリア周辺国に十分な支援を提供することにあるでしょう、そうすれば移民が命懸けで地中海を渡る危険を思い留まらせることになり、また、近くにいた方が問題ガ解決した場合、速やかに帰国が可能となるからです。

シリア難民の問題は、EUが主な責任を負うべきですが、他の国も傍観できません 。1951年に採択された「難民の地位に関する条約」が示すとおり、国際社会全体で難民に対して連帯責任を負っているからです。

日本の対応策ですが、あいも変わらず、安倍首相は、難民支援のための金額を負担することにしました。しかし、金額支援だけで世界の理解が得られるでしょうか。対するドイツは、年内に人口の1%に相当する80万人の難民の受入れと60億ユーロの難民対策費の増額を決めています。このメルケル首相の決意は、世界で歓迎されましたが、多様性への寛容な国への道は険しいようです。治安の悪化や、財政負担の増加の懸念から、難民拒否の声が再び高まっています。それでも、ドイツは課題を乗り越え、難民とともに生きようとしています。いずれ日本も、それ相応の難民受け入れが要求されることは明らかです。私たち国民はどのように対応するか決断を迫られる時期は近いと思われます。よそ事としてはすまされなくなるのではないでしょうか。その準備は今から必要です。

結論としては、EUは、今以上に真剣に難民問題に取り組む必要があります、それと共に全世界が一丸となって早急に解決へ取り組む必要があるということです。

 

 

 

 

 

 

 

 

森島 中小企業 ISO支援オフィス


コンサルタント 森島高明


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