2017年5月 6日

2017年4月のブログーポピュリズムについて

       2017年4月のブログーポピュリズムについて

 

今月は、昨年の英国のEU離脱、トランプの当選と跋扈(ばっこ)する(意味;はびこる)ポピュリズムの波について取り上げます。ポピュリズは、グローバリズムへの反動であり、グローバリズム化で加速する「弱肉強食」に耐え切れなくなった結果と見られますが日本では様子が違うことを見ていきます。

ポピュリズムの台頭の最大の原因は低成長に起因すると考えられます。2008年のリーマンショックに端を発する世界経済危機までは、欧米ともそれなりの成長をしていました。全体のパイが拡大している時には、不満や不安は小さいもので済み、表面化しませんが、近年の低成長、ゼロ成長時代が長引くと、貧困転落への不安が増して、僅かな格差も不満のタネになってしまいます。そうした蓄積が政治的なメッセージに引き寄せられて、世界中で新たな政治勢力の台頭を招いているのです。

米国ではトランプが大統領となり、欧州ではフランスでマリーヌ・ルペン国民戦線党首、オランダでヘルト・ウィルダース自由党党首等の極右勢力がイタリアでハビルジニア・ラッジローマ市長、スペインではパブロ・イグレシアス・ポデモス党書記長、極端な左派が台頭し、政権を伺っています。極右と極左の主張の違いはありますが、共通性は既得権益想への批判、従来の政策の否定です。職を失い、苦しい生活をしている人々の不満が移民排斥へと向かうのは、移民に職を奪われていると思うからあり、反グローバリズムもそうした新興勢力への支持理由になっています。自由貿易が新興国からの輸入を通じて、自分たちの雇用を奪っているという主張です。トランプやルペンを支持する人々はみんな幻想でしかない「昔ながらの生活」を守る強い政治家に期待をかけています。しかし、全てのポピュリズムはほぼ例外なく国際秩序に悪影響を及ぼします。「自国製品を買え」「移民は排斥しろ」「イスラム教徒はみんなテロリストだ」。ポピュリストが各地で挙げるこれらのナショナリズムと保護主義の叫びに政治が応えれば、各国政府は国際規律に従いにくくなります。貿易相手国に負担を押し付ける政策を進め異文化への反感を顕にして新たな反感を生む、そうなれば国際社会は相互に利益を享受することが望めなくなり、誰もが敗者となり、暴力的な衝突の危険が高まります、これは正に人類の進歩に逆行する動き以外の何者でもありません。

  日本のポピュリズムを見ると、元大阪府知事橋下徹氏は「規制緩和」や「反既得権」を掲げて人々の強い支持を得ました。日本では、ほとんど移民を受け入れていないので排外主義の要素はありません。一方でTPP交渉が挫折しましたが、米国との2国間協定で農業開放政策が進みますと、中央と地方の格差、労働者間の格差が増大します。この格差増大を批判して規制政治への不満をうまく吸収できる政治家が出てくれば、日本でもポピュリズムが強い勢力になり得ます。その場合、忘れられた人々に訴える福祉批判・排外主義の傾向をも持つかもしれません。日本の政治は、投票率の高い高齢者を意識して行動しています。財政もアベノミクスに見られるように、長期債務を先送りしているので、年金抑制も世界の水準から見ると低いレベルにあります。日本の若者は、そんな政治に怒りをぶつけるでもなく、投票行動にも結びつけていません。

 ポピュリズムへの解決策は、具体的な成果として安全、移民問題、経済成長に解決を与えることにあり、そのためには政治家の強いリーダーシップが求められています。これは、今やないものねだりと言って済まされない段階にあると思われます。

 

 

森島 中小企業 ISO支援オフィス


コンサルタント 森島高明


〒194-0045
東京都町田市南成瀬1-2-1 成瀬駅前ハイツ2-1005号
TEL: 042-723-1478    FAX: 042-723-1478