2015年6月 9日

5月のブログー中東、北アフリカからの難民について

 5月のブログー中東、北アフリカからの難民について

今月は北アフリカからの難民問題について取り上げます。TIMEの5月11日号で「ヨーロッパの良心の危機」、EONOMIST誌の4月25日号で表紙を飾り「ヨ-ロッパのボート難民ー道徳的、政治的不名誉」と大きく記載されました。欧米の知識階級の間ではこの問題に道徳的痛みと、責任感を持っているものと受け止められます。

 北アフリカからの密航船で地中海を渡り欧州を目指す難民が急増し、それと共に密航船での遭難事故が増加し、4月には数週間で死者は1000人を超え、今年度には3万人に達すると予想されています。EUは、4月19日にリビア沖で起きた密航船の転覆事故により約800名の乗船者中、生存者は28人という事態の発生を受けて、緊急に外相、国防相会議を開き対策を協議し、海軍を動員して密航船を取り締まる軍事行動を承認しました。軍事行動の目的は、密航船を捕獲、破壊し、乗っている難民を北アフリカへ送還することにあります。

チュニジア、リビア、エジプト、シリアは専制体制で残忍な抑圧体制であったが一応の秩序と安定を保ってはいましたが、アラブの春以降、これが崩れ、難をのがれるために難民が大量に発生し、地中海を渡りEU諸国への流入を目指したたわけです。自由を求めて密輸業者に多額の金額を支払い、苦労して乗船した結果が地中海で溺死するという結果は余りにも悲しいものではないでしょうか。これは、アラブの春が欧州にもたらした負の結果生じた地中海クライシスというべきものです。

EUは、難民は当該難民が上陸した国で受け入れることになっているため、不法移民が殺到するイタリアギリシャ、マルタ等の地中海諸国は負担軽減としてドイツなど北部の国に対して難民の受け入れを要請しています。また、昨年11月までは密航船への対策として、イタリアの海軍がパトロールをして、遭難した密航船を発見した場合、救助活動をおこなうことになっていました。しかし、イタリアは負担が重くEUに金額負担を求めたところ拒否されたため、パトロールを中止し、その結果遭難による死者が急増しました。つまり、難民は海上で放置されたわけです。EU各国の政府にとって、国内で反移民を唱える右翼政党が勢力を拡大する中、難民支援を打ち出すことが困難であるというのは無理もない一面もあります。

この問題の根本的原因は中近東、アフリカの旧宗主国であるEU諸国の政策にあり、これらの帝国主義政策により、勝手に国境線を引き民族の分断を図ったため、それのひずみによる紛争,内乱を生じさせたと考えられます。当該国の政治家は 難民の救助、移民の受け入れが相次ぐ難民をうみだしている、一切援助せず出国をさせないようにするのが最大の策だと理論的に正しい本音を述べていますが、これは人道的に認められるものではありません。

アラブの戦闘は数十年続くと予想され、アフリカの宗派抗争、民族紛争と環境資源破壊により泥沼化した状態にあります。EUは責任国として、しかるべき永続性のある対策を立て、真の問題解決を図らない限り悲劇は後を断ちません。人災というべきもので文明国の責任として、EU諸国の首脳、国民の良識ある判断による早急な対策が期待されます。一つの策は、専制的であろうと安定した国家を築き、安定した治安を確保できるようにすべきでしょう。安心して暮らせる状態を作り出すことが、難民として国外へ逃れるより慣れ親しんだ土地で気心の知れた人たちと暮らせる状態が最大の幸せではないでしょうか。

森島 中小企業 ISO支援オフィス


コンサルタント 森島高明


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