2016年7月 6日

6月のブログー英国のEUからの離脱(1

   6月のブログー英国のEUからの離脱(1)

今月は、英国のEUからの離脱の是非を問う国民投票が行われ、誰もが驚く離脱が選ばれことについての述べたいと思います。

予想外のため、どこから始めるべきかと迷いますが、対立の構図、最大の問題点とされる移民問題、離脱派勝利した勝利した7つの理由、社会の分裂等について現在わかる範囲で取り上げたいと思います。

英国は、EUの中でも比較的独自の立場を取ってきました。共通通貨ユーロを採用していませんが、その経済規模はEU内で独についで第2位の規模でEU向けの輸出は約45%、EUの輸出の約16%が英国向けで英国の離脱が決まればEUはGDPの17%を失うことになります。ロンドンは世界の金融センターの機能を果たしてきましたが、各国の投資銀行は,パリやフランクフルトへ拠点を移すとされています。そうすれば英国のGDP75%がサービス関連産業なのでその受ける打撃は大きくなります。先ず、今回の対立の構図を図示してみました。

 

 

残留派

離脱派

経済

離脱なら輸出に関税、外国からの投資が減少、景気悪化、失業を招く。金融市場が大荒れになる。

英国は世界第5位の経済大国、EUと直ぐに有利な自由貿易協定を結べる。

移民

労働力増加は経済や社会保障を支える。

移民は医療・教育などの公共サービスを圧迫する。

主権

欧州共通の政策に利点

政策の自主決定権を取り戻す。EU法からの束縛を逃れる。

社会保障

離脱なら景気悪化、働き手の減少で財源不足になる。

EU分担金支払いをやめ、医療サービスの財源にできる。

安全保障、治安

離脱なら、西側との結束が弱くなる。EUとの情報共有に支障。NATOの弱体化。

EUの人の移動の自由がテロのリスクを高める。

リーダー

キャメロン首相、オズボーン財務省

ジョンソン前ロンドン市長、ファラージュ英国独立党党首

支持層

若者、都市在住、高学歴者、高所得

高齢者、地方在住、低学歴、低所得

 

今回の投票で明らかになった争点による対立は、従来イギリス社会が抱えていた国民の分断を明確化し、その亀裂を一層深めるものになり、これの修復という大きな課題を今後に残しました。

 

最大の争点は移民問題

今回の最大の争点は移民問題にありこれの是非が争われました。イギリス国民は、移民流入の規模や増加率に対する懸念を数10年にわたり、人種差別にあたるという名目でで沈黙させられてきたと感じています。イギリス国内の移民は既に800万人に達しています(総人口は6400万人)。昨年は、33万以上も増えたが、これはイギリスで10番目に大きい都市コベントリーの人口に匹敵します。EUが移動の自由を保障する中、イギリスは他のEU加盟国からの人口流入を制限することがルール上できません。そのため、保守党政権は移民を制限する公約を守れませんでした。ルーマニアやブルガリアからの移民が賃金水準の低下を招いていると人々は感じ、移民が太虚して公立の病院や学校に押し寄せる現状を目の当たりにしています。

 また、EUのルールでは、加盟国からの移民は移住先の国で直ぐに社会保障給付を申請できます。キャメロンは、この制度が東欧諸国などからイギリスへ来る「社会保障ツアー」を引き起こしているとして、申請を移住後4年目からとする改革をEUに求めました。今年2月のEU首脳会議はキャメロンが求めた改革案を基本的に受け入れることで合意しました。キャメロンは「EUにおけるイギリスの特別な地位」が認められたとしてこれを根拠にEU残留を訴えてきました。

 

離脱派が勝利した7つの理由

1.EU離脱による経済打撃」の警告が裏目に出た。EUに50年近く関わり、経済的メリットが宣伝されたが、自分たちはその恩恵を受けていない、置き去りニッされていると感じる人が多かったため、「経済打撃」は無視された。

2.NHS(国民健康保険)に3億5000万ポンド」の公約が広く伝わった。

EUを離脱すればEUに払っている週あたり3億5000万ポンドの予算が浮くのでこれをNHSに回せるという話が分かりやすく有権者をひきつけた。

3.ファラージ氏が移民問題を主要テーマにした。

移民問題は、国民的・文化的アイデンティティーというより大きな問題につながり、離脱派の主張に好都合であり、低所得者へのメッセージとして役立った。

4.国民が首相の言うことを聞かなくなった。

EUと関係を根本的に変えて見せると強調したが、9ヶ月の交渉を経てEUから持ち帰った譲歩内容が、保守党内の欧州会議派を始めとして納得されなかった。

5.労働党が有権者との接点を見つけられなかった。

労働党は、支持者の軒分をひどく読み違え、自分たちの投票運動に何か問題があると気づいてからもほとんど有効な手を打てなかった。

6.ボリス・ジョンソン氏とマイケル・コープ氏の人気

マイケル・コープ司法相離脱運動に知識人としての重みと戦略家としての能力をもたらした。

英国のトランプとも呼ばれる、ボリス・ジョンソン前ロンドン市長は党内の隔たりを超えて広くアッピールできるスター性と求心力を持ち込んだ。

7.大勢の高齢者が投票した

  離脱派の勝利を決めたのは、高齢者です。年齢が高いほど投票する傾向が高く、2015年の総選挙では、65歳以上の投票率が78%だったのに対し、18~24歳は43%25~34歳は54%だった。加えて、55歳以上の離脱支持率は他のどの年齢層よりも高く、65歳以上になると、5人中3人が離脱を希望しました。

 

EUはドイツを頂点とするシステムができており、英国が他の国とのバランスをとってきましたが、英国なきEUは、ドイツの突出となるでしょう。EUを強化するか、解体するか、米国のような合衆国とするのがいいのか?EUからの英国の離脱はEUの解体の始まりと言えるかもしれません、つまりEUの理念は滅びつつあるということです。EUの今後を考える時、現状のままでは中途半端の統合であり、適切な新しい理念を論じることなくして解決策が得られるとは思えません。

今後は、引き続きEUの権力機構、英国首相の後継問題、離脱の手順、英国の離脱で誰が利益を得るのか、英国サッカー界への影響等を述べていきたいと思います。

 

森島 中小企業 ISO支援オフィス


コンサルタント 森島高明


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