2019年4月 2日

2019年3月のブログー依然混迷する英国のEU離脱

  

2019年3月のブログー依然混迷する英国のEU離脱

今月は、依然として離脱の道筋が見えず混迷を深めつつある英国のEUからの離脱(ブレグジット)について述べたいと思います。離脱への動きは日々変わるので3月31日現在をベースに以下の4項目について述べたいと思います。

・最新の経緯 ・経済面のマイナス評価 ・メイ首相の指導力 ・EUの結束力と対応力

・最近の経緯

 英国のEUからの離脱期限は4月12日に設定されている中、3月29日英国下院はメイ首相の提出した離脱案を否決しました。今回、3回目となる投票でメイ首相は離脱案を議会が可決すれば辞任するという捨て身の戦術と「離脱合意案(離脱協定と政治宣言の2本立て)」を離脱条件を定めた「離脱協定」のみとし、英国とEUとの通称等の大枠を定めた「政治宣言」を除くという奇策をもって臨みました。しかし、58票差で否決されました。

この結果、3月21日の欧州種の会議で決まった、離脱協定案を今月中に可決すれば5月22日に協定に沿って離脱するという合意が実現できなくなり、4月12日が離脱期限となり切羽つまった事態となりました。残された短い日数で議会を通過させられるかどうかがメイ首相と関係閣僚、議会の政治的力量が問われることになりました。

EU側は否決の報を受けて、EUのトウスク欧州議会常任議長(EU大統領)が4月10日にEU首脳会議を開き、対応を協議する方針を決めました。EUがこれほど妥協的なのはEUにとっても英国の離脱はマイナスと考えるからなのでしょうか。

・EU離脱に伴う英国経済へのマイナス面の評価

この段階で英国に貿易及び経済面でのマイナス面が大きくクローズアップされてきました。国民投票の際も触れられていましたが、メインは難民の受入阻止が前面に出ていました。ブレグジット後の英国の貿易は永遠の孤立、右肩上がりの物価上昇、景気低迷の長期化という「栄光ある孤立」とはかけ離れた悲惨な状態が待ち受けている懸念が増大しています。日本の各自動車メーカーも英国からの工場撤退を表明しました、他の国、業界も同様の処置をとることになれば雇用面での打撃は避けられそうもありません。国民生活の観点からも少しでもいい条件で離脱を行うことが最善の策ではありますが、議会も国民もマイナスになると評価してるようです。

・メイ首相の指導力

3年間の時間的余裕がありながらこの時期においても混迷を深めるのは指導者として失格の刻印を押されています。よく対比されるサッチャー首相は、強い英国の復活を公言するとともにその実現のため、鉄のような固い意志と指導力で突き進み目標を達成しました。他方、メイ首相は政治家の役割を「何かをすることであり何者であることはない」と考えて官僚的冷静さで対応しようとしてきました。単独プレイを好み、EUとの交渉も一人で乗り込み閣僚たちを遠ざけ、一派の議員を無視してきました。この結果、メイ首相は、英国のEUから「解放」を説得できなかったのです。

EUの結束力と対応力

EUは多くの問題を抱えながらも極右勢力も引きつけています、ポピュリズムの跋扈する国々でもEUからの離脱を言うことなく内部からの改革を唱えています。その理由はその市場、ルールに基づく秩序、地政学的影響力、安定感、開かれた国境のせいです。さらに、ヨーロッパとは単に「市場」を意味するのではないという基本概念で大陸国は一致していますが英国ではそう考える者が皆無に近いという違いがあります。3月25日EUの執行機関である欧州委員会は声明で英国が4月12日に合意なき離脱の可能性が深まる中で「合意無き離脱」の準備が完了したと発表しました。EUは2017年12月以降、準備を重ねてきたからです。準備万端整ったEUと英国の今後の交渉ではどちらが有利であるかは明らかです。

 

今後の見通しは困難ですが、痛みの多い合意なき離脱を避けて合意の上での離脱が望ましいと思われます。

 

森島 中小企業 ISO支援オフィス


コンサルタント 森島高明


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