2018年12月10日

 11月のブログー米の中間選挙の結果について

    11月のブログー米の中間選挙の結果について

今月は注目の米中間選挙の結果について取り上げます。私の注目点はポピュリズムを筆頭とする民主政治の劣化に歯止めがかかるか、トランプ大統領の再選に黄色信号が灯るかでありましたがいずれも残期待外れの結果でした。そこで、中間選挙の結果、選挙戦の争点の投票者の評価、トランプ大統領の再選の可能性、民主政治の方向性について述べたいと思います。

1.選挙結果

 下院選挙では、民主党が多数を奪回しました。民主党は予備選挙を迎え、かつての共和党のティーパーティ運動にも匹敵する草の根の運動を起こしました。若者、非白人層等に選挙人名簿に登録するよう呼びかけ、結果として女性やマイノリティの候補を押し上げました。しかし、民主党のリベラル派の台頭は、共和党への抑止力を発揮し得たぐらいの影響力でした。当面の間は、トランプ支持の頑迷保守派と民主党の間の対立を一層先鋭化させ、混迷を深めそうす。グローバリズムの被害者を自認する白人労働者がトランプに望みを託し、平等や社会保証を説く民主党を社会主義者として非難する構図は変わりません。

2.争点は選挙民にどう評価されたか(出口調査機関による結果)

MeTooの風は起こらず

セクハラの問題は民主党に有利と貼ると思われましたが、必ずしもそうならなかったようです。被害を受けた女性の訴えを信じてもらえないことを「憂慮」または「非常に憂慮する」とした人は78%でしたが、訴えられた男性にも弁解の機会が与えられていないことを「憂慮」または「非常に憂慮する」とした人も74%いました。女性に肩入れをする人は民主党に、男性に肩入れする人共和党に投票する傾向となりました。また、「政治的に正しい」姿勢を要求する圧力の存在について、投票者の66%が度を超えていると答えていました。これは民主党の期待に反した結果でしょう。

銃規制問題は共和党に不利

規制強化を支持した人は59%、反対した37%でした。銃規制を最重要とした人は圧倒的に民主党に投票していました。

暴力問題の影響はわずか

 選挙前に反ユダヤ主義や反黒人、反移民のヘイトクライムが頻発したことに対するトランプの対応は全く評価できませんが、共和党は政府に抗議する若者を民主党の「暴徒」と攻撃した政策が功を奏しダメージを減らしたようです。

不発に終わったロシア疑惑

16年にトランプの選挙運動にロシア政府が協力したとされるロシア疑惑に対して、トランプへの支持か否かの回答には半々に分かれ48%はイエスと答え、49%はノーと答えました。メキシコ国境の壁建設には反対が52%で賛成の47%を上回りました。

移民への強硬姿勢は空振り

 アメリカへの移民を目指す集団にトランプは強行姿勢を示しました。このトランプの政策に対し、投票者の46%が「厳しい」と答え、「もっと厳しくすべき」は17%でした。移民は米国にとって「どちらかといえば有害」が38%で、「どちらかといえば有利が58%でした。

経済に対する評価は2分

回答者の3分の2が景気は良い、または極めて良いと答え、そうした人の多くは共和党に投票しました。家計に関する質問では、大半が「良くも悪くもなっていない」か「徐々に悪化している」と答え、そうした多くの人は民主党に投票していました。

3.トランプ大統領の再選への影響

 今回の中間選挙の結果は、トランプはノーを突きつけた形の勝利でしたが、長期的には敗北に向かって進む可能性が増大したと言えます。今回の選挙で民主党が州レベルの選挙で大きく躍進したことが注目されます。これで国政レベルでもトランプの制作に対抗しやすくなりました。大統領選と議会選挙で支持を掘り起こすための強力な基盤をえました。中間選挙の結果で最も重要なのは、下院が民主等に奪回さされたことで、各委員会の委員長ポスト位が民主党に回ることです。下院が調査権を全面的に活用になればトランプ政権への影響は絶大です。トランプは、この2年間、共和党の下院の協力により、司法妨害容疑や税務・ビジネス関連の問題など種々の法律的問題から守られてきました。今後は、事によると弾劾裁判にかけられる可能性も出てきます。結論として、今回の選挙結果は、2年後での大統領選でのトランプの再選と今後の生き残りに影を落とす結果になりました。

4.劣化する民主主義と今後の方向性

劣化する民主政治とは、トランプ大統領の恣意的政治、台頭する極右勢力の政治トップへの登場で、かつての民主政治の影は全く薄くなっています。仏のマクロン大統領は、11月11日、第1時大戦終戦から100年の記念式典で演説を行い、「ナショナリズムは愛国心を裏切るものだ(略)自分の利益第1主義で他者は2の次だということによって、最も重要な道徳価値観を我々は消し去っている。(略)孤立、暴力あるいは支配によって平和への希望をくじくことは間違っている。そのようなことをすれば、将来の人々は我々にその責任があると言うだろう」と述べました。民主政治の劣化に対する警鐘を鳴らしました。マクロンの言うナショナリズムは、自国の権利をなりふり構わず追求し、世界の秩序を揺るがす態度であり、愛国心とは、自分の属する国の政治に参加し、より良い社会を作り出そうとする能動的態度であり、トランプ大統領に代表されるようなナショナリズムが国家を単位とする従来の民主政治を機能不全に陥らせているのです。

 

森島 中小企業 ISO支援オフィス


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