2014年8月 5日

7月のブログ ー 上半期の印象に残った本

7月のブログー上半期の印象に残った本

今月は上半期の収穫として書評誌で取り上げられている本について述べててみたいと思います。結論としては、種々のジャンルの専門家が共通してとり上げるような成果が少ななかった、つまり不作 であったといえます。

私は、普段から各新聞誌の書評を読み、本屋回りをして新しい面白い本を探すことを何よりの楽しみ

にしています。自分の見立てと書評誌の結果を比べ、良い本の見落としがないかをチェックしていま

す。

前半の収穫で少ないながら票を集めたのは、山本義隆「世界の見方の転換」全3巻、鵜飼哲「ジャッキ

ー・デリダの墓」、水野和夫「資本主義の終焉と歴史危機」です。

・山本義隆「世界の見方の転換」3巻は前著の「磁力と重力の発見」全3巻(毎日出版文化賞、大仏次

郎賞受賞)「16世紀文化革命」全2巻と共に3部作をなすものです。何故西欧に近代科学が誕生し

たのか、という問題意識の基で膨大な資料を苦労して収集して取り組み、これでとにかく完結した

そうです。著者の山本義隆氏は、ご存知の方も多いでしょうが、かっての東大全共闘の議長を努め

た人です。東大の理学部大学院で将来を嘱望されながら、あえて旧態依然たる大学当局に異を唱え

て自らの志を貫いた人です。その後、駿台予備校の講師を勤めながら、東大紛争に関しては求めら

れても一切言及せず、沈黙を守り、在野の学者として貫き通しています。

そして、今回を含む3部作は、学者の間でもその業績は賞賛されています。生き方として頭が下が

る思いでいつも感心させられています。今回も含めて読んでいて、よく分かるとはいえません。た

だ伝わってくるのは、学問、知識とは大衆に伝えられ、共有されその役に立たなくては価値がない、

大衆が知的に前進することへの熱い思いが伝わり読み続けられました。

・鵜飼哲「ジャッキー・デリダの墓」フランスの著名な哲学者ジャック・デリダの弟子である著者が

その師への思いを綴った著作であり、難解な哲学者の1面が分かりやすく伝わります。

・水野和夫「資本主義の終焉と歴史危機」(粗い視点で資本主義の現在直面する問題を取り上げて、独

自の視点でその問題点を指摘している新しさが面白いです。

私が収穫として取り上げるのは、「吉本隆明全集6,7巻」、「丸山真男話文集続1,2」、市田良彦「存在論的政治」、すが秀美「天皇制の隠語」です。

吉本隆明全集は著作が年代毎に纏められて、思考の過程がたどりやすく、文句なしに前半期の成果であると思われますし、「丸山真男話文集」も今まで取り上げられていなかった資料けられました。が誰でも読めるようになったのは貴重な成果だと思われます。丸山真男の談話は読みやすく分かりやすく面白いです。

各識者がこれらを取り上げなかったのは、あまりにもポピュラーすぎてと取り上げるのを躊躇したのではないかと推測したくなります。

市田良彦「存在論的政治」は、アントニオ・ネグリ等の西欧の行動的知識人の視点から現代政治を解明するものであり、その反政治的言説はスリリングです。すが秀美「天皇制の隠語」は著者の癖のある独特の視点で天皇制を解き明かそうとする面白さがあります。

後半期には、米国を中心に欧米でベストセラー中のトーマス・ピケッティの「21世紀の資本」という著作が予定通り秋にみすず書房から翻訳発売されれば間違いなく、多数の票を集めることが予想されます。その他の著作も現れることを楽しみにしています。

これらの面白い本を目の前にすると、夏の暑さも吹き飛ばしてくれそうな楽しみを提供してくらます。誰かのセリフですが、読書って本当に面白いです。

 

 

 

 

 

森島 中小企業 ISO支援オフィス


コンサルタント 森島高明


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