2018年5月11日

 4月のブログ ― 佐藤優を読む

       4月のブログ ― 佐藤優を読む

 

今月は、私が図書館に置かれていれば必ず手にする作家佐藤優について取り上げます。佐藤優は、外務省で鈴木宗男の腹心として絶大な権限を持ち、外務省のラスプーチンと呼ばれましたが、その絶頂期に鈴木宗男事件に連座して起訴され失職しました。大きな体格とギョロッとした目の風貌もしていますが、声は優しいので意外な感じもします。

佐藤優は同志社大学神学部を卒業後、ノンキャリアの専門職員として外務省に入省、ソビエト課に配属され、1988年から19995年までソ連の日本大使館に勤務。1991年のクーデターの際にゴルバチョフ大統領の生存情報について独自の人脈を通じて東京の外務本省に連絡しました。アメリカよりも情報が早く、当時のブッシュ大統領にワンダフルと言われました。その後、日本に帰任し、キャリア扱いに登用され、主任分析官となり、2002年鈴木宗男事件に絡む背任容疑で逮捕され、512日間収監後、保釈され、2009年6月に有罪が最終的に確定しました。この結果、外務省職員として失職しました。これ以後、作家・評論家として生きていくことになりました。その著作活動は、20種類もの著述予定を作成し、それに基づき次々と書き上げていくそのバイタリティは凄まじいものであります。

例えば、雑誌に定期的に寄稿しているのが主観ダイアモンド、週刊東洋経済等私の知る限り10種ぐらいあります。これだけあれば1日中書いていても追いつかないかと思われますが、本人は3時間の睡眠があれば大丈夫ということですからナポレオン大統領並みです。単独の著作以外に対談集を出しています。対談相手は、池上彰、竹中平蔵、手嶋龍一が特に面白く、柄谷行人も対談に応じ、討論においても豊富な知識で相手を圧倒する様は非常に面白いです。次世代を育てる必要性を強調して学生相手にも詳しく、丁寧に説明を行い、その際、参考図書を次々と挙げ場合によっては参考図書を余分に購入して学生に進呈しているそうです。

佐藤優の本で私のお薦め「国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて」、「自壊する帝国」、[獄中記」です。これらは体験に基づく記録的性格ガ強いため、クセがなく読み易くあります。

「国家の罠」:鈴木宗男事件に巻き込まれ、有罪判決を受け失職するまでの過程を描いています。

自身にかけられた一連の容疑、判決を「国策捜査」として反発しています。逮捕原因のひとつは、政治闘争、外務省内の勢力争いに巻き込まれとされています。この本は、第59回毎日出版文化賞特別賞を受賞しました。

「自壊する帝国」:ソ連が崩壊していく過程を描いたスリリングな内容です。登場人物にミーシャという仮名の青年が大きく取り上げられています。反体制運動に関わり種々の策謀を巡らし、佐藤優も相談に乗りながら支援を行う過程が生き生きと描かれていて私には1番面白く思われました。その後、この青年は体制側に移り現在はプーチン大統領の側近となっているようです。どこの国でも、有能な者は変わり身も早くかつ体制側で重宝されるようです。このミーシャは、現在ロシアで大活躍中の右翼思想の大物ドウーギンを先取りしているようで興味深くあります。この書の中で、佐藤優はエリツイン大統領の側近で実力者のブルブリウスシに重宝され種々薫陶を受けていることが伺われ、佐藤優の能力はソ連の大物からも評価されるものであったと思われます。

「獄中記」:監獄で収監中の生活を詳しく綴ったもので興味深いものです獄中生活を十分活用して充電していることが分かります。また取り調べの検察官との論理のやり取り、腹の探り合いはディベートと呼ぶべきもので興味深いです。この本は、政治犯、思想犯として収監された人の読むバイブルとして、活用されているようです。

最近の佐藤氏の見解で面白かった項目

・「イスラム国」の昨年崩壊の原因について二つ挙げています。

1. その隆盛と衰退はトルコが大きく関わっているようです。トルコのエルドアン大統領は強国でライバルのイランに対抗するため、「イスラム国」を3点で支援しました。①「イスラム国」から密輸される石油の受入、②.その代金は北キプロスを通じての送金、③「イスラム国」への人や物資の送り出し、でした。しかし、2016年に起きたクーデター未遂で国内に注力を得なくなりこれらのルートを閉鎖しました。この兵糧攻めと米国主体の多国籍軍に敗れたということです。

2. 「イスラム国」の敗因は支配地域がすべて砂漠と平地であったことです。特にシリア北西部はアラウイ派でシリアのアサド大統領の拠点だったため、山岳地域に入れなかったようです。アラウイ派はイスラム教の一派ですが土着の山岳宗教であり、同じアラウイ派の人としか結婚せず被差別民でありました。フランスの統治下で優遇され、独立後もその地位位を維持し多数派のスンニー派の人々を搾取、収奪してきました。アラウイ派にはシリア国民という意識はなく、アラウイ派以外の人を同族、同法とは思っていなく、反乱。反抗する人を毒ガスで殺すことをなんとも思っていないということのようです。

 

佐藤優の基盤は,キリスト神学、外務省の主任分析間取し得た知見と人脈、特にロシア、イスラエルのインテリジェンス機関との今も続く情報の交換、哲学、社会科学の知見、社会主義青年同盟の1員として学生運動での活躍の経験と幅広いものがあります。インテリジェンスオフィサー(スパイ)だったことを考えますと、その言論には,ハッタリもあるかと思われますが、氏なりの理屈があるので、予見外れてもおもしろくあります。

著書のテーマは多種多様で、子育て、教育一派、数学、英語教育、大学教育、サラリーマンの心得、読書術、参考図書、神学、哲学、社会科学、世界の見方等です。軽やかに知の武装をしたい方にお薦めです。私も頭を柔らかくするため時間の許す限り読んでいきたいと思っています。

森島 中小企業 ISO支援オフィス


コンサルタント 森島高明


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