2014年6月 6日

5月のブログー吉本隆明全集刊行によせて

5月のブログ-吉本隆明全集入手について

 

待望の吉本隆明全集が刊行開始されました。第1回目は第6巻です。各巻6,500円の本はずしりと重みがあります。年代順の編成なので、今回は1959年から1961年までが対象です。あの60年安保の最中に執筆されたもので、この年代の者にとって1960年安保と聞くと今でも胸が高鳴ります。特に1960年6月15日は、樺美智子さんが殺害された日であり、その夜現場に居合わせた私にとりわけ忘れ難い日です。この時期を対象とした論文は、彼の最も戦闘的だったといえる時期のものであるから1番面白いと期待できるものです。

 読み始めて多少違和感を覚えたのは、元来単行本として1つの集合と言うか塊として読んでいたのが、時系列に並び変えられているので昔の記憶と勝手が違い奇妙な感じがします。

個人の全集を読んでこのような違和感を覚えたのは初めてです。詩人の鮎川信夫、谷川雁等の全集を読んでもこのような感じは一切無かったのです。この原因の一つは、吉本隆明の幅が広くて水平展開するとその特徴が薄まってしまうのではないかと推察されることです。肩書きは、評論家ですが、その扱う範囲は、文学論、芸術論、言語論、学生運動論、状況論、哲学、思想とあらゆるジャンルを扱い、すべての部門で吉本理論というべき独自の切り口で理論付けと予想の付かないような展開をしているから、きわめて独創的にみえ、夢中になり読みふけったものです。

 本全集のように、年代順に横展開していると、何か学術論文を読んでいるようで私にとっては奇妙な感じです。吉本は依頼された原稿は基本的には断らなかったから、当然のことながら同じような内容が違った文書の上で展開されており、ある意味では続けて読むと私にはくどい点もありました。単行本には本人の意図組み込まれているものですが、それとは別に 

客観的に表現の比較、強弱の差を感じながらよみました。そして本全集の読み方として工夫すべきだと感じたのは、最初からページ順に読むのではなく、自分でテーマを決めその順に読む必要があると思われました(この本も。ジャンル毎に分類はされているのですが)、その昔、吉本隆明選集が刊行された時はテーマ別に編集されていました。そちらの方が私には読みやすく思われました。

今回読んで気がついたのは、論敵であった革命的共産主義者同盟の議長の黒田寛一を日本の若きマルクス主義者として結構高く評価していることでした。黒田寛一氏が、昔早稲田の観音寺で開催された自立学校の講師として講演した際、聴衆から吉本隆明とどうしてよく喧嘩するのかのかと聞かれて、仲が良いから喧嘩するのだと言っていたことが思い出されました。

今後刊行される全集、全38巻、別巻1を何とかして読み続けたいと思います。体力、気力的に可能かどうか断言はできませんが、これは、弟子を自称する私の義務とし是非ともやり遂げたいと思っています。

森島 中小企業 ISO支援オフィス


コンサルタント 森島高明


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