2020年11月 2日

2020年10月のブログ ― 現代詩について

202010月のブログ ― 現代詩について

今月も新型コロナウィルスの勢いは収まらず、東京では患者数が200名を超える高位安定であり、欧州で

は第2波が襲い、ロックダウン、外出規制などを実施せざるを得なくなっています。このままでは年末のクリ

スマス、新年の行事が危ぶまれています。

今月は少し趣向を変えて現代詩について述べてみたいと思います。きっかけは、知人の女性から所属

する詩のグループの詩の雑誌を贈られたからです。同人誌は女性たちがそれぞれ生活にに密接な詩を書

いています。詩の雑誌といえば「現代詩手帳」しか読んだことがないのですが、各人が努力して書かれ

たことが推測されました。幾つかほっこりした詩があり心和まされました。高齢になってもこのような

仲間同士の場を持つということは楽しみとしてもいいものだと思いました。

 これに誘発されて改めて現代詩ということを考えると学生時代に、戦争協力詩に反発し戦争体験から

出発した「荒地派」の詩を知って現代詩の面白さに惹かれました。それまで詩とは花鳥風月をうたうも

ので自分とは関係ないものという固定観念がありりましたが、荒地派のリーダー鮎川信夫の戦争への批

判と戦後の状況に対する批判をうたった「橋上の人」『繋船の宿』などは倫理的であり、思想的であり

このような表現方法があるのかと感心し、読み続けました。次に進むと谷川雁、吉本隆明になります。2

人とも戦闘的で読むと鼓舞され行動に移さなければという感じを引き起こされるものでした。これは私

たちの世代には共通するもので、その詩を暗唱し、人の前で語りまた文章に引用するという力を持って

いました。谷川雁は、社会の変革を望みながら、現実を変えるの先立って言葉の変革を図ろうとしまし

た。そして三井三池闘争という戦後決算の労働運動が敗北するとともに「瞬間の王は死んだ」と言って

詩の絶筆宣言を行い、20年間ほど経ってやっと「信濃の海」という黒姫山の生活を詠った詩集を出しま

した。

私はもっぱら吉本隆明派でその詩集を何回もも読み返し、元気と勇気を与えられたたものでした。

 鮎川と吉本は詩についても理論家で現代詩の方向づけを行ってきました。吉本は70年代の後半に戦

後詩の命運が尽きたとして「修辞的現在」と言う表現で現代詩である戦後詩を総括しました。戦後詩は

、現代詩についても詩人についても正統的な感心を曳き付けるものから遠く隔たってしまった。それは

戦後史的モチーフを失ってしまい、詩人と詩人を感性や思想によって区別することができなくなってし

まっていて、個々の差異は修辞の言葉にしかも見い出せなくなっているというものです。これは明らか

に現代詩、詩人の後退といえるでしょう。この論に対していまだ有効な理論的反発がみられません。人

間は平均化して個性がなくなったせいかもしれません。そうすると私も自ずと詩から遠かってしまって

いる状態にあります。

現代詩を読んでみようと関心持たれるなら、上記以外にも私が面白いと思われる詩人が多数います。

直ぐに谷川俊太朗を思い出される人が多いでしょう、私はどうも苦手です。荒地派の重鎮ともいえる田

村隆一、黒田三郎が浮かびます。シベリア抑留詩人である石原吉郎も独特の詩を書いています、また「

アカシアの大連」の作者である清岡卓行の静謐な詩もいいものです。

 昔より詩人は世の先端を告知するものだといわれています、そのような存在としての詩人が現在は存

在しないということは誠に不幸なことと思われます。早くそのような詩人が再現することを望みたいも

のです。

森島 中小企業 ISO支援オフィス


コンサルタント 森島高明


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