2022年2月27日

2022年2月のブログー ロシアのウクライナ侵攻について

2022年2月のブログー ロシアのウクライナ侵攻について

今月は新型コロナウィルスを横において、ロシアのウクライナ侵攻というヒットラーの暴挙に並ぶ強硬策に打って出たロシアのプーチン大統領の狙いを見ていきたいと思います。

1.      経緯

ウクライナがロシアと西欧の綱引きの的になったのは東西冷戦の終結(1989)とソ連の崩壊(1991)    という事態が発生して以後のことでした。これを契機にロシアのテリトリーに欧米企業が大挙進出しました。それと共に東欧や旧ソ連圏の国々が西側の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)への加盟申請が相次ぎました。当初、西欧諸侯はこの動きがソ連を刺激するのではないかと懸念して陣営に組み入れることに慎重でした。しかし、1990年代頃からNATROEUは東欧や旧ソ連圏からの加盟申請をなし崩し的に受け入れるようになりました。これが欧米に対するロシアの警戒感を強め、特にウクライナのNTO加盟申請が問題となりました。旧ソ連圏のなかでも経済、人口共に最大のウクライナはロシアにとって、欧米の東方拡大に対する最終防衛ラインであったからです。

欧米もそれは承知で、NATOのリーダーであるアメリカは、ウクライナ軍との合同軍事演習を1996年から実施しながら、ウクライナの加盟申請を事実上放置し続けるなど、「見方だが仲間にしない」というグレーな関係を続けました。

 ウクライナに関して欧米とロシアの対立が表面化したのは、2004年の「オレンジ革命」でした。2004年の大統領選挙で親ロシア派のヤヌコービチ勝利の報道が伝えられると新欧米派の抗議デモが拡大し、最終的に新欧米派のユシチェンコ大統領が就任しました。このオレンジ革命後、ロシアは天然ガス供給を停止するなど強硬姿勢をみせるようになりました。

 この関係が決定的に悪化したのが2013年からのEUと旧ソ連圏6か国との間の「東欧パートナーシップ首脳会合」でした。これはEUが旧ソ連圏にまで、メンバーを拡大しようとするものでウクライナのヤヌコービチ大統領は会合に出席しようとしましたがロシアの反発を受けてこれを撤回しました。これに激怒した親欧米派市民が抗議デモを拡大して各地で政府系市庁舎が占拠されるという無政府状態になりました。その混乱の中でロシア軍が「ロシア系人の保護」を名目でクリミア半島に侵攻をしました。ロシア軍が掌握したクリミア半島で住民投票が行われ、その結果によりウクライナからの分離とロシアへの編入が決定されました。これがクリミア危機で微妙な状態にあったウクライナに手を伸ばした欧米の浅はかな行動と、なりふり構わず自分のテリトリーを守ろうとするロシアの拒絶反応がこの危機を招いたと言えます。

2.      今回の危機の原因は

クリミア危機直後に発足したクリミアの親欧米政権は、ドイツ、フランスの仲介でロシアとの間で2014年9月、外国軍隊の駐留禁止や緊張緩和をしたミンスク合意が成立しました。その後もウクライナでは騒乱が絶えませんでした。

特にロシア人系の多い東部ドネックでは、親ロシア派の過激派と政府軍の衝突が続きました。彼らはクリミア半島のようにウクライナからの分離とロシアへの編入を求め、ウクライナ政府はこれをテロ組織と呼びロシアが支援していると非難してきました。

一方、ウクライナ西部を拠点とする過激な民族主義者は、政府を支持して東部の分離主義者への攻撃をスカレーとさせ、民間人の無差別殺傷といった戦争犯罪も指摘されてきました。欧米は東部の分離主義者に対するロシアの支援を批判する一方、西部の民族主義過激派を支援してきました。

こうした中で、「ウクライナに協力するがNATO加盟は棚上げにする」欧米のグレーな対応は維持されてきました。しかし、2021年バイデン大統領のアメリカがウクライナ支援に動いたため事態は急展開しました。その一つは、9月末から10月初旬に行われた、米軍とウクライナによる合同軍事演習でした。この軍事演習は1966年から行われてきましたが、2021年は15か国から6000人の兵員が参加する大規模なものでした。さらに10月23日アメリカはウクライナに180基のジャベリンミサイルゕらなる対戦車ミサイルを配備しました。アメリカによる既成事実の積み上げにロシアは反応し、ジャベリン展開の1週間後の10月末、ウクライナ国境付近に部隊を移動し始めました。

プーチンはNATOにレッドラインを超えるなと警告し、国境に展開する部隊の規模を年末までに10万人に増やしただけでなく、1月中旬に超音速ミサイルをウクライナに向けて配備し、首都キエフまで射程に収めました。

 この基本的構図は2014年のlクリミア危機に似ています。

3.      プーチンの狙い・

プーチンは、ソ連崩壊後不満が蓄積しました、ロシア崩壊後、欧米の仲間入り狙っても相手にしてもらえないことが続き

次の恐れと考えを抱いたことです。

(1)  Natoの東方拡大

(2)  将来的にグルジアやウクライナがNATOに加盟し、ロシアが欧米型の民主主義国に囲まれる。

(3)さらに、西側の衰退という物語を信じていることです。


欧米諸国のポピュリズムの台頭について問われて、プーチンは、政府の目的は「普通で安全で安定していて、かつ先の読める生活を一般の人たちが送れる社会を作ることだ」と述べていました。西側のエリート層がこの点を忘れたため大衆と距離ができたと指摘し、「リベラリズムな考え方は時代遅れになった」と総括しています。プーチンが恐れているのはNATOがウクライナに拡大することではなく、民主主義が自国の玄関先に迫ることです。このため、ウクライナが独立国家として自らの意志で選ぶ権利を否定したいと考えています。これこそがウクライナ征服を命じた理由です。

プーチンは、西側の民主主義国が長期間の対峙に備えた胆力を持ち合わせていないことに賭けています。更には欧州の安全保障全体を左右する発言力と影響力を持つことを狙っています。

現時点でプーチンは批判に動じていないようです、19世紀の古い帝国主義時代の領土の一部と「偉大さ」を復元した21世紀の皇帝になりたいと願っています。そのためにはウクライナだけではことは終わらないでしょう。

     この点に関しては、過去の多くの侵略者のように、プーチンが致命的に行き過ぎたという結果をもたらすこと願いたいと思います。

 4.クリミア侵略のもたらしたもの

・世界平和が国連での議論や国際法によって保障されているという幻想を打ち砕きました。

2度の世界戦争、その後の各地での紛争を踏まえて多少は人類も進歩を見せたかと思われましたが、残念ながら一人の独裁者によりあっさり打ち砕かれるもろいものであることが判明しました。

・改めて国連とは何か、何のための存在すするのかが問われました、しかし、ロシアへの制裁は大国の拒否権で機能せず存在価値を失墜させています。責任は一部に事務総長の機能不全という能力の問題もありましょうが、再度真に平和に役立つ組織を検討する時期に来ているのではないでしょうか。

・自国を守るには自分で守らなければならないことを改めて世界に示しました。ウクライナはいざとなればアメリカ及びNAToが守ってくれると期待していたのかもしれません、そのためクリミアの危機を経験しながら武力の近代化、兵力の増強を積極的に行ってきたとは思えません、NATOも積極的に近代的兵器の提供で支援を強化したようにみえません。最後には自国で守らなければならいという事態が待っていたのでした。

5.           各国の対応

米国: バイデン大統領はロシアに対しあらゆる対抗措置をとると言っていますが今年の秋の中間選挙を控え上院、下院とも共和党に逆転されるのがほぼ確実といわれているので、及び腰は否めません。全くの世論の動向見です。アフガニスタン撤退では全くの失敗とされ、名誉挽回を図りたいでしょうが、今一つ腰が引けている感が否めません。世論の動向を気にしながら施策の選択となりますからどうしても対策が遅れがちになります。結果的にウクライナにとって不幸な事態と言わざるを得ません。

中国:ウクライナ情勢をもっとも注意深く見守っているのは中国でしょう。それは、台湾進攻のケースを頭に西欧諸国の対応を追っていると思われるからです。国連安全保守理事会の決議ではソ連制裁にさすがに反対することなく、棄権票を投じました。しかし、北京五輪大会中の首脳会談で緊密ぶりを確認しています。中国にとってはウクライナ侵攻でロシアに矛先が向かうことは米国の2正面作戦となり多少安堵を与えるものとなっているでしょう。

日本:台湾の解放という中国の優先策がある限り、我が国も安心していられません。米軍基地がある限り、戦争に巻き込まれ日本が攻撃の標的になるのは明らかだからです。日本としてはウクライナ侵略を我が事として真剣に考え準備しておく必要があるでしょう。他国は我が国を守ってくれるということは無いと考えて対策を講じて居おく必要があるでしょう。しかし、岸田首相を始め関係機関が真剣に対応策を検討しているように見えないのが心配です。

 

力が全てとなった世界では、侵略や脅しは避けられません、ロシアへの制裁は原油、天然ガスの価格上昇として跳ね返ってきますが更なる状況の悪化を防ぐためには避けられません。今はこらえることが不可欠と言えます。

森島 中小企業 ISO支援オフィス


コンサルタント 森島高明


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